公的な資料と研究にもとづく解説

トップ > ニオイケア

ニオイケア

体のにおいのしくみ:汗・皮脂・皮ふの菌と、においの種類

「汗くさい」と言いますが、出たばかりの汗そのものは、ほとんどにおわないです。においの正体は、汗や皮脂を皮ふにすむ菌が分解してできる成分です。この記事では、汗を出す2種類の腺、皮脂、皮ふの菌の関係と、汗臭・足・加齢臭・わきが・口のにおいの全体像を、皮膚科の学会や研究をもとに説明します。

この記事には広告(PR)を含む場合があります。

  • 汗を出す2種類の腺(エクリン腺とアポクリン腺)の違い
  • 汗そのものはほとんどにおわず、皮ふの菌が分解してにおいになるしくみ
  • 汗臭・足・加齢臭・わきが・口のにおいの主な原因
  • 制汗剤・デオドラントの表示の見方と、受診の目安

汗を出す2つの腺:エクリン腺とアポクリン腺

汗を出す腺(汗腺)には2種類あります。日本皮膚科学会の解説では、次のように分けられています(日本皮膚科学会「皮膚科Q&A 汗の病気」)。

ふだん「汗」と呼んでいるのは、ほとんどがエクリン腺の汗です。エクリン腺の汗はほぼ100%が水のため、一般に悪臭を放つことはないとされています。アポクリン腺の分泌物は脂質を多く含みますが、出た時点では菌がいない無臭の状態です(MSDマニュアル プロフェッショナル版「臭汗症」, 2024)。

たとえるなら、汗は「味のついていない材料」です。材料のままではにおわず、あとで菌が「調理」することで、においが生まれます。

皮脂もにおいの材料になる

皮ふには、あぶら(皮脂)を出す腺もあります。皮脂腺は顔、頭、胸の中央などに多く集まっています(MSDマニュアル プロフェッショナル版「脂漏性皮膚炎」)。皮脂も、汗と同じようににおいの材料になります。

皮脂の成分は年齢とともに変わります。化粧品会社の研究では、40歳以上の人の皮脂に特定の脂肪酸と、あぶらが酸化してできる物質が増え、それが分解されて加齢臭の成分になることが報告されています(Hazeほか, 2001)。加齢臭と、30〜40代に出やすいにおいについては、別の記事で詳しく説明しています。

においを作るのは皮ふの菌

皮ふの表面には、もともと多くの菌がすんでいます(常在菌)。わきのにおいを調べた研究のまとめでは、腺から出るのはにおいのない「もと」の物質で、菌が持つ酵素がそれを分解することで、においの強い成分が出てくると説明されています(Natsch・Emter, 2020)。

日本皮膚科学会も、わきがのにおいは、アポクリン腺の汗に含まれる脂肪酸が皮ふの表面の細菌に分解されてできると説明しています(日本皮膚科学会「皮膚科Q&A」)。

つまり、においを抑える考え方は大きく次の3つに分かれます。

  1. 材料(汗・皮脂)を減らす:制汗剤、こまめに汗をふく
  2. 菌が分解する時間を短くする:洗って落とす、汗をかいた服を早めに替える
  3. 菌の働きを抑える:承認された範囲で殺菌成分を使う

汗臭と足のにおい

エクリン腺の汗は本来におわないですが、汗でふやけた皮ふの角質を細菌が分解すると、においが出ることがあります(MSDマニュアル プロフェッショナル版「臭汗症」, 2024)。蒸れやすい足の裏は、その代表です。

化粧品会社が足のにおいを調べた研究では、足のにおいが強い人の靴下と足から短い鎖の脂肪酸が多く見つかり、中でも「イソ吉草酸」は、においのある人全員から見つかり、においのない人からは見つからなかったと報告されています。汗と皮脂を合わせて置いておくと、足のにおいが再現できたことも示されています(Kandaほか, 1990)。

足のにおいは、靴の中の湿気と時間が重なって強くなります。同じ靴を毎日はき続けず、乾かす日をつくることが基本になります。

加齢臭・ミドル脂臭・わきが

年齢や体質によって、目立つにおいは変わります。

加齢臭とミドル脂臭、わきがの治療と遺伝との関係は、それぞれ別の記事で詳しく説明しています。

口のにおい

厚生労働省のe-ヘルスネットによると、口臭の大部分(80%以上)は口の中が原因で、その多くは舌の表面につく白い汚れ(舌苔)と歯周病です。においの主な成分は、口の中の菌がたんぱく質を分解してできる硫黄を含むガスで、硫化水素とメチルメルカプタンが約90%を占めます(厚生労働省 e-ヘルスネット「口臭の原因・実態」, 2019)。

同じ資料では、15歳以上の約10%が「口臭が気になる」と答えた一方、口臭の自己評価と実際の口臭の有無は関係しないと報告されています。自分の口のにおいは慣れてしまい、自分では判断しにくいためです。口臭の相談で大学病院を受診した約1,000人のうち、約3分の1は治療が必要な口臭が認められなかったという報告も紹介されています。

口臭は歯科で相談できます。まずは歯と舌の手入れ、歯周病の治療が基本になります。

制汗剤・デオドラントの表示の見方

においケアの製品は、法律上「医薬部外品」と「化粧品」に分かれ、うたえる効果が違います。

また、デオドラントはにおいを目立たなくするもの、制汗剤は汗の量を減らすもので、働きが違います(MSDマニュアル プロフェッショナル版「臭汗症」, 2024)。汗の量が気になるなら「制汗」の効能がある医薬部外品を、においが中心なら「わきが(腋臭)」「皮膚汗臭」の効能がある医薬部外品を選ぶのが目安です。どの製品も、においをゼロにするものではないです。

気になるときの受診先と目安

体のにおいの多くは、洗う、汗をふく、服を替えるといった手入れで軽くできます。それでも生活に困る場合は、次の診療科で相談できます。

受診の目安:急に体や息のにおいが変わった、歯と舌の手入れをしても息のにおいが続く、においとともに体調の変化がある場合は、内科を受診しましょう。息のにおいには、糖尿病や腎臓・肝臓の病気のサインとして現れるものもあります(厚生労働省 e-ヘルスネット, 2019)。わきや足の皮ふが赤くただれる、かゆみが強いといった症状がある場合は、皮膚科を受診しましょう。

最終確認日:2026年9月30日

参考にした資料