加齢臭と「ミドル脂臭」:原因物質、たまりやすい場所、洗い方と生活習慣
年齢とともに「枕や服のにおいが変わった」と感じる男性は少なくないです。40代以降の加齢臭と、30〜40代に出やすいとされる「ミドル脂臭」は、原因となる成分も、においが出やすい場所も違います。この記事では、論文と企業の研究発表をもとに、それぞれのしくみと、洗い方・衣類・枕カバーのケア、食事や生活習慣との関係を、根拠の強さとあわせて説明します。
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- 加齢臭の原因物質「2-ノネナール」が見つかった研究の中身
- 30〜40代の「ミドル脂臭」と原因とされる「ジアセチル」(企業の研究発表)
- においがたまりやすい場所と、洗い方・衣類・枕カバーのケア
- 食事・生活習慣との関係は、どこまで分かっているか
加齢臭とミドル脂臭のちがい
同じ「年齢のにおい」でも、2つは別のものとして報告されています。
- 加齢臭:原因は「2-ノネナール」。あぶらっぽく、青くさいにおい。40歳以上で見つかる(Hazeほか, 2001)
- ミドル脂臭:原因は「ジアセチル」。脂っぽいにおい。30〜40代の男性の頭部とその周辺で多い(マンダム, 2013)
どちらも、皮ふから出た汗や皮脂が、皮ふの菌の働きや酸化によって変化してできます。体のにおい全体のしくみは、別の記事で詳しく説明しています。
加齢臭の原因物質「2-ノネナール」
加齢臭の原因物質は、化粧品会社と香料会社の研究者が2001年に皮膚科の専門誌に発表した論文で報告されました(Hazeほか, 2001)。論文の内容は次のとおりです。
- 26〜75歳の人の体のにおいを分析すると、2-ノネナールは40歳以上の人からだけ見つかった
- 年齢とともに、皮脂の中の特定の脂肪酸(ω7不飽和脂肪酸)と、あぶらが酸化してできる過酸化脂質が増えていた
- 2-ノネナールの量は、これらの量と比例する関係にあった
- 皮脂の成分を酸化させる実験では、この脂肪酸が分解されたときにだけ2-ノネナールができた
つまり、年齢とともに増える皮脂の成分が酸化・分解されて、加齢臭の成分になると考えられています。研究した会社の解説では、このにおいは男女を問わず40歳を過ぎたころから増えるとされています(資生堂, 2019)。
30〜40代の「ミドル脂臭」とジアセチル
「ミドル脂臭」は、男性用化粧品の会社が2013年に学会で発表し、ニュースリリースで公表した研究による名前です(マンダム, 2013)。国際的な専門誌の論文で広く確かめられたものではなく、一企業の研究発表である点を知ったうえで読んでください。発表の内容は次のとおりです。
- 40〜50代の男性の体の各部位のにおいを専門の担当者がかぎ分けると、頭部のにおいが最も強く、加齢臭が出やすいと言われていた耳の裏のにおいは弱かった
- 40〜50代の男性の頭部と枕には、20代の男性より強い「脂っぽいにおい」があり、その原因成分をジアセチルと特定した
- 頭部のジアセチルの量は40歳前後を中心に多く、20〜40歳では年齢とともに増える傾向があった
- ジアセチルは、皮ふにいるブドウ球菌の仲間が、汗に含まれる乳酸を分解してできる
同じ会社が大学と行った研究(日本人の男女55人)では、ジアセチルのにおいを感じにくい人が男性の35%、女性の21%いたと報告されています(マンダム, 2015)。自分では気づかなくても、周りの人は感じている場合があるということです。
においがたまりやすい場所
皮脂腺は頭、顔、胸の中央などに多く集まっています(MSDマニュアル プロフェッショナル版「脂漏性皮膚炎」)。研究を発表した会社の解説や研究では、次の場所が挙げられています。
- 頭部、首の後ろ、耳のまわり(資生堂, 2019)
- 胸もと、背中(資生堂, 2019/龍口ほか, 2012)
- 頭部と枕(マンダム, 2013)
背中や首の後ろは、自分の鼻で確かめにくい場所です。においの感じ方には慣れもあるため、「自分ではにおわない」ことが「においがない」ことを意味するわけではないです。
洗い方のポイント
加齢臭もミドル脂臭も、材料は皮脂と汗です。研究した会社の解説では、朝晩のシャワーや入浴で余分な皮脂や汗を洗い流し、皮脂が多く自分で確かめられない背中は念入りに洗うこと、外出先でもこまめに皮脂や汗をふき取ることが勧められています(資生堂, 2019)。手順にすると次のとおりです。
- 頭皮は指の腹で洗い、耳の後ろと首の後ろも泡でなでて流す
- 胸と背中は、泡をのせて洗い、すすぎ残しがないようにする
- 汗をかいた日は、タオルやシートで首まわりの汗と皮脂をふく
においケア用の石けんや制汗剤を使う場合、医薬部外品なら承認された効能(「皮膚汗臭」「わきが(腋臭)」「制汗」など)の範囲で効果が確かめられています。化粧品の石けんが言えるのは「(汚れをおとすことにより)皮膚を清浄にする」などの範囲です(厚生労働省, 2011)。どちらも、においをゼロにするものではないです。
衣類・枕カバーのケア
においの原因物質は衣服にも残ります(資生堂, 2019)。枕からも脂っぽいにおいが見つかっています(マンダム, 2013)。
- 肌に直接ふれる下着、シャツ、枕カバーは、こまめに洗濯する
- 汗をかいた服は長く置かず、早めに洗うか、乾かしておく
- 枕カバーは、頭皮の皮脂が毎晩つくものと考えて、シャツと同じように洗う
洗濯の間隔について、研究で決まった回数は見当たらないです。においが気になる場合は、枕カバーの交換を増やすところから始めましょう。
食事・生活習慣との関係(根拠の強さ)
「肉を減らせば加齢臭が減る」「抗酸化の食品をとればよい」といった話はよく見かけますが、人を対象にした研究は少なく、結果もそろっていないです。
- 男性17人が2週間ずつ「肉を食べる食事」と「肉を食べない食事」を入れかえた試験では、女性30人の評価で、肉を食べない期間のわきのにおいの方が、より好ましく、弱いと判定された(Havlicek・Lenochova, 2006)
- 一方、男性の汗のにおいを女性が評価した別の研究では、野菜や果物を多くとっている指標がある人ほど汗のにおいが好ましく評価されたものの、自己申告の食事では、脂肪や肉、卵をよくとる人の方が好ましい評価だった(Zunigaほか, 2017)
どちらも人数が少なく、わきのにおいの「好ましさ」を調べた研究で、加齢臭の成分そのものを測ったものではないです。大学病院の形成外科も、赤身肉や動物性脂肪などがにおいを強めるという報告はあるが、十分な科学的根拠はなく関連ははっきりしないと説明しています(日本医科大学武蔵小杉病院 形成外科)。
加齢臭が皮脂の酸化でできることから「抗酸化の食品が効く」と考えるのは、今のところ推測の段階です。食事は、においのためというより健康全体のために整え、においのケアは洗うこと・衣類のケアを中心に考えるのが現実的です。
受診の目安:洗い方や衣類のケアを続けても、急に体のにおいが強くなった、以前と違う種類のにおいがする、においとともに体調の変化がある場合は、内科で相談しましょう。頭皮や胸・背中に赤み、フケ、かゆみが続く場合は、皮ふの病気(脂漏性皮膚炎など)が関係していることもあるため、皮膚科を受診しましょう。
最終確認日:2026年9月30日
参考にした資料
- Haze S, et al. 2-Nonenal Newly Found in Human Body Odor Tends to Increase with Aging. J Invest Dermatol 116(4):520-524(2001年)
- マンダム ニュースリリース「マンダム、ミドル男性に発生するニオイ成分を特定」(2013年11月18日)
- マンダム ニュースリリース「ミドル脂臭の原因成分ジアセチルへの感受性は人によって大きく異なることを発見」(2015年9月24日)
- 資生堂 Beauty Journey「どう防ぐ? 加齢臭対策」(2019年11月21日)
- 龍口巌ほか「ポリフェノール配合石鹸による中高年男性の加齢臭低減効果」におい・かおり環境学会誌 43巻5号(2012年)
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「脂漏性皮膚炎」
- Havlicek J, Lenochova P. The Effect of Meat Consumption on Body Odor Attractiveness. Chem Senses 31(8):747-752(2006年)
- Zuniga A, et al. Diet quality and the attractiveness of male body odor. Evol Hum Behav 136-143(2017年)
- 日本医科大学武蔵小杉病院 形成外科「ワキガ(腋臭症)の治療」
- 厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(2011年7月21日)