男性向けサプリによく入っている成分を研究で見る:シトルリン・アルギニン・亜鉛・マカ・高麗人参など
男性向けのサプリメントによく使われる7つの成分について、人を対象にした研究がどこまであるのか、何人を調べたのか、根拠はどのくらい強いのかを、論文と公的機関の資料で確かめて整理します。紹介するのは成分についての研究であり、特定の商品の効果を示すものではないです。
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- 研究の「根拠の強さ」の見分け方
- 成分ごとの、人での試験の有無・人数・分かっていないこと
- とりすぎなど、安全面で知っておきたいこと
- 7つの成分をまとめた一覧表
まず結論:EDに効くと確かめられた健康食品の成分はない
厚生労働省の統合医療情報サイト(eJIM)が翻訳した米国国立衛生研究所の資料では、性機能の改善やEDの治療に安全かつ有効であると示された補完療法はないとされています。ハーブの研究は量が少なく、多くは人ではなく動物で行われたものだと説明されています(厚生労働省eJIM, 2025)。日本では、健康食品に病気の治療や予防の効果を表示することも法律で認められていないです。
研究の「強さ」の見分け方
同じ「効果あり」でも、信頼できる度合いは研究の種類で大きく違います。天気予報にたとえると、1日だけ当たった予報より、何年分もの記録で当たり外れを調べたほうが信頼できるのと同じです。
- 系統的レビュー・メタ分析:同じテーマの試験を決まった方法で集め、まとめて評価したもの。最も強い根拠になりやすい
- ランダム化比較試験:参加者をくじ引きのように分け、成分と偽薬(プラセボ)を比べる試験
- 比べる相手のない試験や、飲む順番を固定した試験:思い込みや時間の経過の影響を除きにくい
- 動物実験・試験管の実験:人で同じことが起こるとは限らない
L-シトルリンとL-アルギニン
どちらもアミノ酸の一種で、体の中で血管を広げる物質(一酸化窒素)の材料になることから注目されてきました。
- L-シトルリン:イタリアで軽いEDの男性24人に、最初の1か月は偽薬、次の1か月はL-シトルリン1日1.5gを飲んでもらった試験では、勃起の硬さを4段階で答える点数が1段階上がった人は、偽薬の期間で2人(8.3%)、L-シトルリンの期間で12人(50%)でした(Cormioほか, 2011)。ただし、参加者だけが中身を知らない単盲検で、飲む順番は全員同じ、期間は1か月ずつの小さな試験です。著者も、少なくとも短期ではED治療薬より効果が弱く、さらに研究が必要だとしています
- L-アルギニン:軽度から中等度のEDの男性540人を含む10件のランダム化比較試験をまとめた分析では、1日1,500〜5,000mgで、偽薬や何もしない群より改善したと報告されました(Rhimほか, 2019)。ただし、ほかの成分と組み合わせた製品の試験も含まれ、一つ一つの試験は小規模です
心筋梗塞を起こした153人に、標準の治療に加えてL-アルギニン(1回3gを1日3回が目標)か偽薬を6か月飲んでもらった試験では、L-アルギニンの群で6人(8.6%)が亡くなり、偽薬の群は0人だったため、安全上の理由で試験が打ち切られました。研究者は、心筋梗塞のあとにL-アルギニンをすすめるべきではないとしています(Schulmanほか, 2006)。心臓の病気がある人は、自己判断で飲まないようにしましょう。
亜鉛
亜鉛は体に欠かせない栄養素(必須ミネラル)で、多くの酵素の材料になり、不足すると味覚の異常、皮膚炎、食欲不振などが起こります(国立健康・栄養研究所)。一方、食事から十分とれている男性が亜鉛を上乗せしたときの性機能への影響を、質の高い試験で確かめた結果は、今回調べた範囲では見つからなかったです。
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、男性の1日の耐容上限量(これ以上とり続けると健康被害のおそれが出てくる量)は、18〜29歳と75歳以上で40mg、30〜74歳で45mgです(厚生労働省, 2024)。とりすぎが続くと、銅や鉄の吸収が妨げられ、貧血や免疫の異常などが起こるおそれがあります(国立健康・栄養研究所)。食べ物からのとり方は、別の記事で詳しく説明しています。
マカ
- 2010年の系統的レビューでは、条件を満たしたランダム化比較試験は4件だけでした。健康な男性や閉経後の女性で良い結果が出た試験がある一方、効果が見られない試験もあり、結論を出すには試験が足りないとされました(Shinほか, 2010)
- 2023年にEDの男性に限って調べ直した分析でも、対象の試験は2件、合計79人だけでした。1件は良い結果、もう1件は効果なしで、確かな結論を出すには足りないとされています(Leeほか, 2023)
高麗人参(朝鮮人参)
医学研究を評価する国際団体コクランの2021年のレビューでは、軽度から中等度のEDがある20〜70歳の男性587人を含む9件の試験が対象になりました(Leeほか, 2021)。
- 勃起の働きを専用の質問票で測ると、偽薬との差は小さく、医学的に意味があるとされる差には届かなかった(根拠の確かさは低い〜中程度)
- 「性交ができるようになったか」を本人に聞いた結果では改善が見られたが、根拠の確かさは低い
- 副作用は偽薬と大きな差がなかったが、どの試験も期間は12週間以内で、ED治療薬と比べた試験はなかった
推奨量を短期間(最大6か月)飲むなら多くの人で安全とされますが、長期の安全性には疑問が残っています。多い副作用は不眠で、脈が速くなる、血圧の変化、頭痛などもあります。血糖値に影響するとの報告があり、糖尿病の人は使う前に相談しましょう(厚生労働省eJIM, 2021)。
トンカットアリ
男性ホルモン(テストステロン)の血液中の値を調べた研究をまとめた2022年の分析では、9件の研究を集め、そのうち5件の試験を統合して、値が上がる方向の結果が報告されました(Leisegangほか, 2022)。ただし統合できた試験は5件だけで、研究者自身も、医療で使う前にはさらに研究が必要だとしています。ホルモンの値の変化が悩みの改善につながるかや、長期の安全性はまだ分かっていないです。男性ホルモンが明らかに低い病気(性腺機能低下症)が心配な場合は、血液検査で調べられるので、泌尿器科に相談しましょう。
ノコギリヤシ(前立腺の悩み向けとして売られることが多い成分)
前立腺が大きくなることによる排尿の悩み(前立腺肥大症)向けとして売られることが多い成分です。2023年のコクランのレビュー(27件の試験、合計4,656人の男性)では、最も信頼できる試験にもとづくと、ノコギリヤシ単独では、3〜6か月後の排尿の症状や生活の質に偽薬とほとんど差がなく、12〜17か月後も同様でした。この結論の確かさは高い〜中程度とされています(Francoほか, 2023)。
副作用は胃腸の不調や頭痛など軽いものが中心です(厚生労働省eJIM, 2021)。排尿の悩みの原因には前立腺がんなど早く治療が必要な病気もあるため、サプリメントで様子を見る前に受診しましょう。
7つの成分の一覧
根拠の強さは、各論文の記載をもとにこの記事で整理したものです。
| 成分 | 人の試験と人数 | 根拠の強さ | 分かっていないこと | 安全面の注意 |
|---|---|---|---|---|
| L-シトルリン | 軽いEDの24人(2011年) | 弱い(単盲検・順番固定・1か月) | 大規模な比較試験での結果 | 長期の安全性の情報が少ない |
| L-アルギニン | 10件、計540人(2019年の分析) | 弱い〜中程度(小規模・他成分との併用を含む) | 単独での効果の大きさ、長期の効果 | 心筋梗塞後の人で死亡が多かった試験あり |
| 亜鉛 | 食事が足りている男性での性機能の試験は見つからず | 性機能については判断できない | 上乗せしたときの効果 | 上限量は1日40〜45mg。とりすぎで銅不足・貧血 |
| マカ | EDの男性で2件、計79人(2023年の分析) | 弱い | 十分な人数での結果、長期の安全性 | 長期の安全性の情報が少ない |
| 高麗人参 | 9件、計587人(2021年のコクラン) | 低い〜中程度。質問票での差は小さい | 12週間より長い効果と安全性 | 不眠、血圧の変化。糖尿病の人は要相談 |
| トンカットアリ | 9件の研究、うち5件の試験を統合(2022年の分析) | 弱い | 悩みの改善につながるか、長期の安全性 | 長期の安全性の情報が少ない |
| ノコギリヤシ | 27件、計4,656人(2023年のコクラン) | 高い〜中程度で「偽薬とほぼ差なし」 | ほかの成分と組み合わせた場合の効果 | 軽い胃腸症状や頭痛 |
研究の結果が個々の商品に当てはまるとは限らないです。品質の見方は別の記事で詳しく説明しています。
受診の目安:勃起の悩みが続いている、尿が出にくい・夜に何度もトイレに起きるといった症状がある場合は、サプリメントを試す前に泌尿器科に相談しましょう。心臓の病気、高血圧、糖尿病がある人や、薬を飲んでいる人は、飲む前に医師か薬剤師に相談しましょう。
最終確認日:2026年9月30日
参考にした資料
- 厚生労働省eJIM「勃起不全(ED)/性機能改善」(米国NCCIH資料の翻訳, 2025年6月公開)
- Cormio L, et al. Oral L-citrulline supplementation improves erection hardness in men with mild erectile dysfunction. Urology(2011年)
- Rhim HC, et al. The Potential Role of Arginine Supplements on Erectile Dysfunction: A Systemic Review and Meta-Analysis. J Sex Med(2019年)
- Schulman SP, et al. L-Arginine Therapy in Acute Myocardial Infarction: The VINTAGE MI Randomized Clinical Trial. JAMA(2006年)
- 国立健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報「亜鉛」
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(2024年10月)
- Shin BC, et al. Maca (L. meyenii) for improving sexual function: a systematic review. BMC Complement Altern Med(2010年)
- Lee HW, et al. Maca (L. meyenii) for erectile dysfunction: a systematic review and meta-analysis. J Mens Health(2023年)
- Lee HW, et al. Ginseng for erectile dysfunction. Cochrane Database of Systematic Reviews(2021年)
- 厚生労働省eJIM「朝鮮ニンジン(高麗人参、オタネニンジン)」(2021年3月公開)
- Leisegang K, et al. Eurycoma longifolia (Jack) Improves Serum Total Testosterone in Men: A Systematic Review and Meta-Analysis of Clinical Trials. Medicina(2022年)
- Franco JVA, et al. Serenoa repens for the treatment of lower urinary tract symptoms due to benign prostatic enlargement. Cochrane Database of Systematic Reviews(2023年)
- 厚生労働省eJIM「ノコギリヤシ」(2021年3月公開)