EDの治療:飲み薬の効果と副作用、保険、オンライン診療の注意点
勃起の悩み(ED)には、効果が確かめられた治療があります。ただし、薬には飲めない人がいて、入手の仕方によっては健康被害につながることもあります。この記事では、治療の選択肢と、それぞれの効果・副作用・費用を、学会のガイドラインと厚生労働省の資料をもとに説明します。
この記事には広告(PR)を含む場合があります。
- 第一選択とされる飲み薬(PDE5阻害薬)のしくみ、効果、副作用
- 飲み薬を使えない人と、保険が使える場合・自由診療の費用
- オンライン診療、ネット通販・個人輸入で気をつけること
- 飲み薬以外の治療と、その根拠の強さ
治療はまず原因と持病の確認から
ガイドラインでは、治療の前に、治せる原因がないか、生活習慣や飲んでいる薬に見直せる点がないかを確かめ、本人とパートナーの希望を聞いて治療を選ぶ流れが示されています(ED診療ガイドライン第3版, 2018)。EDは心臓や血管の病気と関係することがあるため、薬をもらうだけで終わらせず、体の点検の機会にすることが大切です。原因や体の病気との関係は、別の記事で詳しく説明しています。
飲み薬(PDE5阻害薬)のしくみと効果
EDの飲み薬は「PDE5阻害薬」と呼ばれる種類で、日本では有効成分の異なる3種類が使われ、治療の第一選択とされています(ED診療ガイドライン第3版, 2018)。勃起を弱める酵素(PDE5)の働きをおさえ、陰茎の血管が広がった状態を保ちやすくします。スイッチを入れる薬ではなく、性的な刺激があるときに働きを助ける薬なので、飲むだけで勃起が起こるわけではないです。種類によって、効き始めの早さや効果が続く時間、食事の影響の受けやすさが違います。
このうち1種類について、海外の12週間の臨床試験(11件、3,000人以上)をまとめた論文では、「勃起が改善した」と答えた人は、薬の群で76%、偽薬(プラセボ)の群で22%でした(同, 2018)。また、最初に効かなかった人でも、飲むタイミングや食事との関係などを正しく指導し直すと、41.5〜59%で効果が出たと報告されています(同, 2018)。効果には個人差があり、全員に効くわけではないです。
主な副作用と、飲めない人
国内の臨床試験で多かった副作用は、頭痛(6〜13%程度)、ほてり(4〜16%程度)、鼻づまり、胃のむかつき、目の見え方の変化などで、多くは軽く一時的とされています(ED診療ガイドライン第3版, 2018)。
まれですが重い副作用として、急に片方の目の視野が欠ける、急に耳が聞こえにくくなる、勃起が4時間以上おさまらない、が報告されています。いずれかが起きたら服用をやめ、すぐに医療機関を受診しましょう(ED診療ガイドライン第3版, 2018)。
次の人は、この薬を使えないか、特に注意が必要です。
- 狭心症などで硝酸薬(舌の下に入れる薬、飲み薬、貼り薬など)を使っている、または持ち歩いている人:一緒に使うと血圧が急に大きく下がるため、併用できない
- 肺高血圧症の治療薬のうち、可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬を使っている人:同じく併用できない
- 一部の不整脈の薬、抗真菌薬、HIVの薬などを使っている人、重い腎臓や肝臓の病気がある人:使えない、または量の調整が必要
飲んでいる薬はすべて、お薬手帳などで医師に正確に伝えましょう。
保険が使える場合と、自由診療の費用
EDの飲み薬は原則として自由診療(全額自己負担)です。例外として、2022年4月から、勃起不全による男性不妊の治療として、一般不妊治療の「タイミング法」で使う場合に限り、一部の製剤が保険の対象になりました(厚生労働省保険局医療課, 2022)。主な条件は次のとおりです。
- 原則として、泌尿器科で5年以上の経験がある医師が処方する
- 学会のガイドラインの手順でEDと診断されている
- 本人かパートナーが、投与日からさかのぼって6か月以内に、保険の不妊治療の管理を受けている
- 1回の診療で、タイミング法の1周期分・4錠まで
- 続ける期間は6か月が目安で、原則として初回から1年以内
子どもを望む目的がない場合は、年齢や原因にかかわらず自由診療になります。自由診療の価格は医療機関が決めるため差が大きく、医療機関が公開している価格を確認した範囲では、1錠あたりおおむね数百円から2,000円前後でした(2026年9月時点)。後発医薬品(ジェネリック)は比較的安い傾向があります。診察料が別にかかるかどうかも医療機関で違うため、総額を事前に確かめましょう。
オンライン診療を使うときの注意
厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(2018年策定、2022年1月一部改訂)では、初診からのオンライン診療は原則として、ふだんから診てもらっている医師が行うこととされています。そうでない医師の場合は、映像を使った事前の相談で必要な情報を確かめてから行います。さらに、不適切な例として「勃起不全治療薬等の医薬品を、禁忌の確認を行うのに十分な情報が得られていないにもかかわらず、オンライン診療のみで処方する例」が挙げられています(厚生労働省, 2022)。
- 映像と音声でのやりとりがあるか確かめる(チャットやメールだけの診療は認められていない)
- 持病、飲んでいる薬、胸の痛みなどの症状を正確に伝える
- 本人確認書類の提示を求められる前提で準備する
- 医師が対面の診察が必要と判断した場合は、それに従う
(厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に関するQ&A, 2019/同省の患者向けリーフレット)
ネット通販・個人輸入の危険
国内でEDの薬を扱う製薬会社4社が2016年に行った合同調査では、インターネットで入手したEDの薬70検体のうち約4割(40.0%)が偽造品でした(製薬会社4社合同調査, 2016)。ガイドラインでは、偽造品に表示どおりの成分が入っていない例、塗料やインクなどの不純物が混じった例のほか、国内で、偽造品に混入していた血糖を下げる薬によって重い低血糖が起きた例が紹介されています(ED診療ガイドライン第3版, 2018)。厚生労働省も、個人輸入の医薬品は国内の法律にもとづく品質・有効性・安全性の確認がされておらず、偽造品のおそれがあると注意を呼びかけています(厚生労働省)。安さや手軽さより、医師の診察を受けて正規の薬を処方してもらうことを優先しましょう。
飲み薬以外の治療と、根拠の強さ
飲み薬が効かない、または使えない場合は、次のような方法が検討されます。いずれも2018年のガイドライン時点の情報で、現在の扱いは受診先で確かめる必要があります(ED診療ガイドライン第3版, 2018)。
- 陰圧式勃起補助具:筒で陰茎に血液を引き込み、根元をバンドでとめる医療機器。性交が可能な状態は約90%で得られるとされる一方、内出血や痛みなどがあり、2年後には半数が使うのをやめている。血をかたまりにくくする薬を使っている人は使えない。保険はきかず自費で購入する
- 陰茎への注射:効果は高いと報告されているが、痛みや、勃起がおさまらない副作用がある。国内では未承認で、学会の共同研究への参加などが条件の自費診療とされていた
- 低強度の衝撃波治療:弱い衝撃波で血管の新生を促すことを目指す治療。ランダム化比較試験3件のうち2件で改善が見られ、有効率は60〜90%と幅がある。中等度までの、血管が原因のEDで期待されるとされる一方、国内で承認された機器はなく、研究の数も限られている
とくに衝撃波治療は、まだ根拠が十分に積み上がった治療とは言えないです。費用は自由診療で医療機関ごとに大きく違い、複数回の通院が必要になることが多いため、回数と総額、効果が出なかった場合の扱いを事前に確認しましょう。
受診の目安:勃起の悩みが続いて困っている場合は、泌尿器科に相談しましょう。心臓の病気がある人、硝酸薬を使っている人は、自己判断で薬を手に入れず、主治医に相談しましょう。
生活習慣の見直しで改善が期待できる点については、別の記事で詳しく説明しています。なお、2025年9月に「男性性機能障害診療ガイドライン2025年版」が出版されていますが、この記事は本文を確認できた2018年版にもとづいています。
最終確認日:2026年9月30日
参考にした資料
- 日本性機能学会・日本泌尿器科学会「ED診療ガイドライン 第3版」(2018年)
- 厚生労働省保険局医療課「不妊治療で使用される医薬品の保険給付上の取扱いについて」保医発0325第7号(2022年3月25日)
- 厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(2018年3月、2022年1月一部改訂)
- 厚生労働省「『オンライン診療の適切な実施に関する指針』に関するQ&A」(2018年12月作成、2019年7月改訂)
- 厚生労働省 オンライン診療の患者向けリーフレット
- 製薬会社4社「偽造ED治療薬4社合同調査結果」プレスリリース(2016年11月24日)
- 厚生労働省「医薬品等を海外から購入しようとされる方へ」
- 日本性機能学会「男性性機能障害診療ガイドライン 2025年版」案内ページ